コロナ禍において、オンラインショッピング需要が急増し、多くの企業がECサイトの構築に取り組んでいます。
しかし、自社に合ったECサイト構築方法がわからず、悩んでいる企業は少なくありません。
そこで今回は、これからECサイトを立ち上げる企業担当者の方に向けて、ECサイト構築の方法や特徴、選ぶ際の基準、そして費用やスケジュールについて解説します。
この記事を読んでいただければ、ECサイトの構築方法について理解が深まるでしょう。
Eコマースサイトの制作には、通常のWebサイトとは別の要素が必要です。
一般的なWebサイトでは、単体のページと問い合わせフォームが必要ですが、Eコマースサイトでは、商品、在庫、顧客情報、電子メールを管理する機能、カート、決済機能を統合する必要があります。
このように複雑なEコマースサイトですが、その構築方法はいくつかあります。
自社のニーズや状況に応じて、さまざまな選択肢を検討してみてください。
モール型
一つの大きなプラットフォームと契約し、そこに自社のトレードマークを入れた店舗をオープンさせることです。
モール型の代表例としては、Amazon、楽天市場、Yahoo!があります。
モール型のスキーマでECサイトを構築すると、モール自体の視認性を活かして便利に集客できるメリットがあります。
- 自社の認知度が低い場合、モールに出店することで集客しやすくなる
- 他社を求めてモールに訪れたユーザーでも回遊してくれる可能性がある
- モールの信頼性・信用力の恩恵を受けることができる
- テナント料、決済手数料や売上に対するロイヤリティの支払いが必要
- 自社のイメージを押し出しにくい
何もないところから組織を立ち上げ、ECサイトを制作しても、ウェブ検索で何ヶ月もサイトへのアクセスが見込めないこともあり、集客の面では非常に厳しいものがあります。
また、ソーシャルメディアを使って情報を発信しても、その効果がすぐに現れるとは限りません。
一方、来客の多い有名ショッピングモールに出店すれば、集客の心配が少なく、戦略や計画を練る時間も確保できます。
デメリットとしては、プラットフォームへの手数料の支払いや、モール内の他企業との競合が挙げられます。
また購入者からはモールでの購入という認識になり、そのブランドで購入したというイメージになりにくいのもデメリットの一つです。
ASP型
ウェブ上でソフトウェアベースのサービスを提供する企業を指す言葉です。
「BASE」、「STAORES」、「Shopify」などがASPに代表例です。
ASPの登場により、これまで高額な費用がかかっていたEコマースプラットフォームを、知識や計画なしに構築することが可能になりました。
その反面、ASPの場合、あらかじめデザインされたテンプレートと固定された機能に限定されるため、カスタマイズの幅が狭いという欠点もあります。
しかし、追加料金でレイアウトやフォーマットを変更できる場面もあるので、会社のコーポレート・アイデンティティに合うものを確認するようにしましょう。
- 導入費用のみで高機能なECサイトを構築できる
- ASPによっては操作が簡易的で、専門知識が不要
- 細かい設定(越境ECやサブスクでの販売など)になると専門的な知識が必要になる
- モール型とは違い1からの集客が必要になる
SaaS型
ASP型とSaaS型は混同されがちですが、どちらもクラウド上に存在するECサイトを構成するための機能を持ったプログラムのことを指します。
SaaS型は、多くの企業が同じシステムを利用する「マルチテナント型」であり、ASP型は1社がサーバーやデータベースを占有する「シングルテナント型」になります。
「ecforce」「MakeShop」「カラーミーショップ」などがSaaS型の代表例です。
- サーバーや管理用PCなどのハードウェアが必要ない
- コストや工数を抑えて導入可能
- ベンダー側の環境下に構築されるため常に最新の状態で運用できる
- カスタマイズ性が低い
- ベンダー側での管理によりメンテナンス時は利用できない
- 不正利用のリスクがある
パッケージ型
パッケージ型は、ASP型やSaaS型のハイグレードになります。
ベンダーからソフトを借りるのとは異なり、パッケージでは自社のサーバーにインストールし、運用に合わせて変更する必要があります。
そのため、ASPやSaaS型に比べて準備コストがかかりますが、拡張性が高く、細かな設定が可能なため、総合的なECサイトを構築することができます。
- ECサイト運営の標準機能が充実している
- パッケージ版であればセキュリティが強い
- 初期費用が高い
- システムが古くなればメンテナンスが必要
フルスクラッチ型
名前の通り、ECサイトを最初からすべて構築する方法です。
既存のシステムを借りずに、必要な機能や見た目を設計し、組織のニーズに合ったオンラインストアを構築します。
ASPやSaaS、パッケージ化されたEコマースシステムもカスタマイズは可能ですが、一定の障害や仕様による制限があります。
フルスクラッチの場合、そのような制限がないのが大きなメリットです。
一方、独自にシステムを開発する場合は、その複雑さゆえに開発コストや期間がかさみ、リリース後の維持費や開発費も大きくなります。
- 必要な機能を全てつけることができる
- カスタマイズ性が高い
- 柔軟な対応が可能
- コストが高い
- 高い技術力・能力をもった人材が必要
ECサイトの構築は、「こういうシステムや機能が欲しい」という視点ではなく、「どういう顧客や商品に対応するサイトなのか」を考える必要があります。これらを踏まえた上で、プラットフォームを選ぶ基準は以下2つです。
費用対効果があるか
ECサイトの構築には、コスト、特性、裏付けが不可欠ですが、それと同じくらいに自社の規模を意識する必要があります。
初心者がパッケージやフルスクラッチでEコマースを構築すると、投資回収に長い期間を要し、経営難に陥る可能性があります。
そこで、ビジネスの規模に応じて構築方法を決めるのが賢明です。
自社に必要な機能を備えているか、中長期的にビジネスが拡大しても性能を維持できるか、外部データ連携が可能かどうか、API連携の可否など、拡張性も考えた上で最善のプラットフォームを選びましょう。
運用のことまで考えた機能があるか
ECサイトでは、「サイト内での集客・獲得率を高める」という顧客誘引力と、「既存顧客の満足度を高め、再購入率を向上させる」という顧客管理力の2つの機能が重要です。
これらをそれぞれ「フロント機能」「バックオフィス機能」と呼びます。
フロント機能では、ユーザーの集客効果を高めるための仮説検証のためのデータが引き出せるか、また、実質的な評価に基づいて改良する仕組みがあるかどうかを確認する必要があります。
バックオフィスでは、課金や商品管理、メール配信などの業務が円滑に行えるかどうか、また、顧客一人ひとりに合わせたサービス(One To One)を提供する機能があるか、ユーザーの満足度を高めるための機能が充実しているかを確認する必要があります。
ここからは、構築方法別に必要な費用と制作期間を詳しくみていきましょう。
初期費用 | 月額費用 | 制作期間 | |
---|---|---|---|
モール型 | 〜数万円 | 〜5万円 | 約1ヶ月 |
ASP型 | 〜数十万円 | 〜10万円 | 約2ヶ月 |
SaaS型 | 300万円〜 | 10万円〜 | 約3ヶ月 |
パッケージ型 | 500万円〜 | 10万円〜 | 約6ヶ月 |
フルスクラッチ型 | 数千万円〜 | 数十万円〜 | 約12ヶ月 |
ECサイトのさまざまな構築方法についてお伝えしました。
Eコマース事業を成功させるためには、手数料を含めた初期費用や月額費用を抑え、事業規模に応じた適切な投資を行うことが必要です。
運用のことまで見据えた構築方法を選んで、自社にあったプラットフォームを選んでいきましょう。